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  • 2017/03/21 10:05

    医者「栄養失調ですわ。なんか滋養のあるもんでもあげてください。…はぁい、次の方?」

    清太「ちょっと待ってください先生、滋養のあるもんて何ですか?そんなもん、どこにあるんですか?先生!」


    ※※※※


    清太「節子、ただいまぁ。ん、どないしたんや?」

    節子「なぁ兄ちゃん?櫛で髪梳いていたらなぁ、もつれた部分がひっかかるねん…


    ほんで、うち、思てん。これって人間が置かれてる現実社会とよぉ似てはるわぁって…


    だってなぁ、髪の毛一本、ただ伸びていかはるだけやったら誰にも邪魔されへんのに、全部の髪の毛が一斉に伸びようとしはるやろ?

    ほんで、頭が動いたり冷たい風が吹くたんびにちょっとずつ絡まっていって、わだかまりが出来るんやないかなぁ。

    しかもなぁ、伸びれば伸びるほどやねん。

    ほんで気付いたときにはもう身動き取られへんのよ。

    西宮のおばさんに当て擦られて、しんどかったなぁ、兄ちゃん?

    せやけど重要なんはな、兄ちゃん。髪の毛があるから頭がある訳やないねん。

    うちらに要ったんはその認識やったんかなぁ…


    でもなぁ、兄ちゃん。

    一番嫌なんはな、仲良しのお友達とか頑張ってはる兵隊さんがもうあかんようになって脱落していくのを見てしもた時やねん。

    なんでってな、ひとり生き延びた分だけ孤立してしまうやろ。

    多分『孤立』ってな、脱落の恐怖のことやねん。


    なぁ何で髪、すぐ抜けてしまうん?

    広い頭に髪の毛一本って頼りないなぁ…

    なんか、戦時中に身寄りもなく出奔して防空壕で生活するようなもんやわぁ。

    兄ちゃん、ドロップ美味しいなぁ…」

    清太「節子、それドロップやない、脱落(ドロップ)や!」