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  • 2016/11/29 05:20

    先日、ワイフが言い放った一言

    「はなまるうどんの中サイズは2玉入ってるよ」

    耳を疑った。

    これまで何度も利用してきたはなまるうどん。

    僕はいつも中を頼んでいた。

    僕はワイフに言った「まさか。そしたら僕はいつも2玉のうどんを食べていたことになるんだよ?」

    ワイフは繰り返す「そのまさか。中は2玉。わたしも最初は驚きを禁じ得なかったもの」

    そうして僕のはなまるライフを思い返す。

    確かにいつも、この中は満腹の度を軽々超えてきやがる!!

    と感じていた。

    だが、はなまるの並=小であったのだ。

    合点がいった。


    そんなやり取りの翌日、ワイフからのメッセージ。

    「今、はなまるにいるのだけれど、

    中学生の男の子が肉うどん大といなり寿司とコロッケを注文していたわ。

    ちなみにうどん大は3玉よ」

    も、猛者。

    しかし、その一方で丸刈りの詰襟の制服を着た真面目な男の子を思い浮かべていた。

    ひどいくらいにステレオタイプのビジュアルである。


    そして丸刈り猛者はうどんを食べられたのかとワイフに問うと

    「彼ならギブアップしたわ、恐ろしいサイズね」

    食べ盛りの中学生を返り討ちにする大。

    えげつねぇな…

    *ワイフより「中学生ではなく、修学旅行中の小学生だよ」と指摘がありました。

    ですので、丸刈り詰襟の猛者でなく、ナップサックを背負ったスポーツ少年にイメージを訂正してお読みください。



    そしてこのやりとりが過去のはなまるライフのある出来事を思い出させた。


    ――――――――――――――――



    僕ははなまるうどんに足を運んだ。

    入り口の自動ドアを抜け、うどん並を注文し、天ぷらを一つ二つと皿に取り会計を済ませる。

    僕の後ろには巨大なトルコ人(かどうか知らんけど)が続いていた。

    ほどほどに混んでいる店内。

    僕は入り口近くのカウンター席に腰を下ろした。

    そして七味唐辛子などを少し振りかけ食べ始めた。

    コシのある歯ごたえの良いうどんときちんと揚げられた天ぷらの妙。

    それを交互に口に運ぶと非常に適切な味がした。

    そして、満腹への坂道に差し掛かった頃に妙な音に気がついた。

    何かに似た音であった。


    ずーっずるずるっ

    ずーっずるずるっ


    「このすすり方は落語家以来やで」

    そんなことを心の中で感じながら僕は満腹坂道の中腹まで進んでいた。

    そしてまた音がする。


    ずーっずるずるっ

    ずーっずるずるっ


    「えっひょっとして、さっきのトルコ人が後ろの席で鼻をかんでる音?いやいや、鼻水ですぎ」

    次第に僕の坂道の足取りも重くなる。


    ずーっずるずるっ

    ずーっずるずるっ


    一向に止まない音。

    周りの客を見渡そうとしてもカウンター席故に横しか見えない。

    「トルコ人よ、どれだけのうどんがその丼に込められている?」

    そう思わせる音のボリュームと頻度。

    大でもとうに消尽しているはずであろうよ。


    ずーっずるずるっ

    ずーっずるずるっ


    にも関わらず、相変わらず後ろから音が聞こえてくる。

    「俺は今、満腹坂道の頂にいるよ、トルコ人!!」

    と心で叫びながら後ろを振り返った。


    自動ドア


    そう、僕の後ろは自動ドアであった。

    ただ自動ドアがゴムの素材を引きずり、

    くだんの音を立てながら開閉していたのである。


    僕は呆然と丼の底に沈むうどんの切れ端を箸で探していた。

    まるでトルコ人の面影をかき消すように。


    ――――――――――――――――


    はなまるうどん京都錦店、あなたのことです。



    おわり